イザベル・モレッティの魅力と技量を、余すことなく伝える一枚。古典から近代まで、いわゆるハープ・オリジナルの作品を収録している。ちょうど若き正統派の演奏者として溌溂としていた時期なので、余計に瑞々しい音群が押し寄せてくる感じがする。舌を巻くのは、選曲である。ヒンデミット、カッセラ、デュセック、タイユフェール、C.P.E.バッハなど、それこそ最近になって、アカデミックな場面やコンサートで取り上げられるようになってきた作曲家たちに、早くから注目していたことが窺い知れる。演奏に古さを感じないのは、当然先取りしていたからでもある。
モレッティの現在と、このCDを聴き比べてみると、増した円熟度などはさて置いて、一貫しているのは演奏が正確で、なおかつ「歌っている」ということだ。つい聴き惚れてしまう。どちらかというと華奢で、手の型を見ていると、まるで編み物でもしているかのような静謐な手さばきだけれども、聞こえてくる音の情報が豊富であり、クセのない節が浸透圧なく迫ってくる。お弟子さんも多いのだが、「先生のように弾けるようになりたい」と誰もが思うだろうなと想像する。豊かな音を出すには、逆に力を抜いて、いかに音楽そのものへ自分を没入させるかが大事であるか、モレッティが手本になるだろう。