現代音楽とも結びついたミニマルという概念がある。音の動きを最小限に抑え、パターン化された音型を反復させる音楽。すでに1960年代から、多くの共感者を呼び、その潮流は今や映画音楽などにも効果的に反映されている。晩年のエリック・サティもこうした傾向を残しており、他にもラ・モンテ・ヤング、スティーヴ・ライヒ、マイケル・ナイマン、久石譲、坂本龍一といった名前を挙げられる。彼らの名前から、「なるほどああいう音楽か」と納得する向きもあるかもしれない。なかでもフィリップ・グラスといえば、ミニマルの代表格だろう。
ピアノやギターほど小回りが利かないが、ハープもメロディ・パートをこなせる楽器には違いない。だが、ハープだからこそフィットするパターンはないものかと思案した人はたくさんいる。オランダのマイヤーは、まさにその盲点を突いた。彼女は、フィリップ・グラスが好きで、彼のピアノ曲・編曲が、かなりハープと相性がいいことに早くから気づき、ソロでアルバムを作ろうと計画した。ハープとミニマルとのコラボレーションという新しいアイディアを、まずはグラス本人に問うたところ、本人から殊の外気に入られたそうで、迷いを断ち切って創ったのがこのアルバムということになる。人間の内省的な感情に、訴えてくる感じのハープは、「この手があったか」と膝を打つほど。教会で録音されたサウンドが、余計に浸透圧の高い音を鳴らし、まるで一篇一篇が映画のサウンドトラックのようだ。