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Vol.6 doux (ドゥ)/間を奏でる

銀座十字屋で取り扱うCDの中から、スタッフが実際に聴いてみて、みなさまにおすすめしたいCDをレビュー形式でご紹介します。CDレビューの一覧はこちら

 

doux / 間を奏でる

もしも現代版室内楽という表現が許されるのなら、この「間を奏でる」という楽士集団にこそ似つかわしい。この静謐さ。凛とした音の粒立ちのたおやかさ。それぞれの楽器が役割を主張し、インプロビゼーションも展開しているのに、グループのトーナリティを崩すことなく、集団的な表現としては至極真っ当にまとまっている。昔は夜な夜な貴族たちがサロンで繰り広げていたであろう、音楽を供される特別の場、そこはデカタンスで少し淫靡で、ルールを外れた実験の場でもあっただろう室内楽の世界。演奏される音楽は、クラシックというわけではないが、今この「間を奏でる」の造り出す空間というものは、まさに本物を求めて集結した音の好事家たちが車座になって囲むような場でこそ本領が発揮される。前衛的と言ってしまえば陳腐だが、そこまで敷居は高くなく、むしろ語り部を中核にしたトライブが火を囲み、部族たちの詩が楽器を通じて語り明かすような情景に近いのかも。別の言い方をすれば、演奏者らが持ち寄った私小説を語り合う祝祭空間だ。

アルバムは、邪魔な先入観さえ持たなければ、ついつい長居してしまう音楽の綴れ織りが封入されている。アイリッシュハープを弾いているのは、堀米綾。ここでのハープは、バックグランド音楽ではない。むしろ冒頭の「うつろい」や「間奏曲」などでは、物語の起点になって端緒を紐解くなど、メリハリをつけるような役回りをするところがユニークだ。行間を時折、素朴なヴォイスが埋め、そこにパーカッションがアクセントをつける。滑り込むようにモーダルなフレットレスベースが気持ちよいグルーヴを吹き込む。たゆたう綿帽子のような優しいヴァイオリンと、集いを結うピアノの確信犯的な構成力。「ハープが活かされる表現の場とは、こういう場所もあるのか」と、目から鱗が落ちた。


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