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Vol.13  Healing Harp ~ハープで贈る名曲の花束~ / 内田奈織

銀座十字屋で取り扱うCDの中から、スタッフが実際に聴いてみて、みなさまにおすすめしたいCDをレビュー形式でご紹介します。CDレビューの一覧はこちら

 

Healing Harp ~ハープで贈る名曲の花束~ / 内田奈織

柄にもないことを思い付いた。このCDを花が好きな母に贈ってみようと。音楽を商売にしていると、あらゆる音楽を包括し、比較してしまう癖がつく。だが、何も主張しなくても良い影響を与えてくれる音楽は現に存在する。母には、理屈は通用しない。良いか悪いかなどは、彼女の範疇ではなく、好きか嫌いかしかない。果たして、この作戦が奏功するかは分からないのだが、今度実家へ帰った時にでも、台所から出ようとしない昔堅気の母に聴こえるように、食器棚の脇に電話と共に置いてあるCDラジカセに、このCDをそっとセットして音を流しておこうと思う。鼻歌まじりでハミングし始めたら勝ち、「これ流しているのは誰?終わったら片づけてね」と言われたら負けだ。

この作品は、奇を衒っていない。春というテーマに花をモチーフにした唄が散りばめられている。楽章のついた第〇番のような小難しいニュアンスはない。春といえば、新しい何かが始まる予感から希望やフレッシュな感情が芽生える一方で、実は別れの季節でもある。「テネシー・ワルツ」「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」「さくら(独唱)」が入っているのは、そうした不安やストレスにも、ハープはどこまでも優しく包み込んでくれることを暗示しているし、花の可憐さとそこに秘めた凛とした潔さは、時には国の窮地を救うほどの癒しを持っていることを、「花は咲く」「エーデルワイス」が証明するだろう。内田奈織の独奏はテンポがゆったりしていて、寛ぎの空気を吹き込み、とても浸透圧が高い。どれも一度は聴いたことのある粒よりの選曲は、きっと母の年代にはイチコロだ。息子から好きな花の種類など、こそばゆくて聞けないから、少し変わった“花束“だけど、今春さりげなく置いてこようと思っている。


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