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【CD視聴レビュー】虹へ / tico moon

虹へ / tico moon

クリスマスとは、いろいろあった一年を振り返って、歳を越す前にがんばった自分を年に一度だけ思いっきり甘やかせることができる日だと思っている。国境や宗教を超えて、この日を皆が待ち焦がれるのは、きっと自分を取り戻すことができるからだ。本当はもっと素直な自分。泣くより笑うほうが多いはずの自分。冬の季節と共に舞い降りてくるクリスマス・ソングだが、この時期に聴く音楽は、素のままの自分にリセットしてくれる大切な祝歌なのだ。

tico moonの最新作「虹へ」は、きっと最高のクリスマス・プレゼントになりうるアルバムだ。寄り添い、時に溶け合い、彼らのサウンドは、きっと自分たちが尊いと思っている小世界を音に託して語っているだけなのに、聴いているこちらが見える景色は、途方もなくワールドワイドだったりする。ケルティックな音を身にまとうかと思えば、ジョージ・ウィンストンのような楽想の拡がりを見せたり、吉野友加のパステル・ヴォイスで童心を呼び起されたりと、チームアップして時も経つのに、いつまでも新鮮でジャンルレスな音楽を提供している。本作では、ウインター・シーズンを背景に、オリジナル曲が染み入るような浸透圧の高さを維持しているのが凄い。

作曲力が明らかにグレードアップしている。ケルティックの古謡に交じって、それらは何ら拮抗せず、声高に主張せず、流れの中からすっと心に入ってくる。人の心が多少ダウンしている時期に、このアプローチは反則である。多くのクリスマス・ソングは、神への賛美であるのに対し、このアルバムは自分をねぎらい、明日を信じさせてくれるような浮遊感が、音楽のご褒美を自分だけにもらった錯覚すら感じさせる。そんな小さな幸せをお裾分けしたら、最高のクリスマス・プレゼントになりうるというのは、そういうことだ。<CDの詳細・お求めはコチラ

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