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【CD視聴レビュー】風と愛 / 中村愛

風と愛 / 中村愛

 ここ数年すっかり愛聴盤になっている。「まあ、よくぞ発掘したよ」という曲のオンパレードだからだ。ハープに関して、日本人は西洋の瀟洒な楽器という憧れからか、いくら声を大にして「日本にもいい曲がたくさんある」と吹聴しても馬耳東風だ。むしろ、日本の曲が海外で注目されるようになったほうが、鼻が高いはずなのだがなあ。

 特に映画ファンでもある自分がここまで鼻息荒くなるのも、伊福部昭、早坂文雄、冬木透といった映画の隠れた主人公といえるサウンドトラックを多く作ってきた才人たちの軌跡が収録されているからだ。彼らのハープ・オリジナル曲を発掘したり、日本人ハーピストの礎となった石田一郎の「牧歌」があったり、ある意味日本人だったといって差し支えないヨセフ・モルナール編の「さくらさくら」も復刻されている。かなりマニアックだなあと思っていても、実際に聴いてみると、優しく、どこか懐かしいのに新鮮な音群が、耳へどんどん吸収されてゆく。「よくぞ、日本人に生まれけり」と、自らを褒めたくなる。「まったくこれだけの作品群が、どこに隠れてやがったんだ」と、つい舌打ちしてしまう。

 ビルマの竪琴の音楽は聴いたことがあるが、組曲があったとは。日本のマエストロ、今でいえばジョン・ウィリアムスのような映画音楽の泰斗でもある伊福部が、ハープと親和性があったのだ!黒澤映画初期のフィルムのスコアは全部書いてきた早坂は、雨月物語でもいい仕事してたんだね。子供ながらにウルトラセブンのBGMは別格に恰好いいと感じており、まさに憧れだった冬木がやはり天才であったと分かった時の愉悦。それらを世代的には自分より若い中村愛が、ハープを嬉々と奏でてくれるているのが何とも嬉しい。たぶんこれだけの仕事、これらの曲が好きでないと、とてもではないが務まらないだろうから。<CDの詳細・お求めはコチラ

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