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ディスク・レビュー:スウィート・スー・エヴァンス

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弦を爪弾き、ペダルを操作し、ただでさえ忙しいハーピストだが、さらに弾きながら歌った人がいた。スー・エヴァンスという人だ。しかも、キュートな容姿で評判を呼んだ。ジャンルは、ジャズに分類してよいだろう。実際は、ポピュラーに分類しても良いのかもしれない。ドリス・デイの名唱で鳴る「インチ・ワーム」なども収められている。ジャズ界には同名のパーカッション奏者がいて、「彼女とよく間違われた」とこぼしていたそうだ。スーはハープ奏者だった母親のもとに生まれ、幼い頃からハープを習っていた。しかし9歳でオペラ歌手を志すようになり、やがて名門スタンフォード大学に入学。実はその頃から「歌うハープ奏者」として知られるようになっていたらしい。アルバムを通して聴くと、むしろ「ハープを弾きながら歌うシンガー」であり、ハープの技術的に特筆するものがあるわけではない。ただ、ギターを弾くようにハープを奏で、ヴィブラフォンとの共演で、彼女の甘い声がよりドリーミーな雰囲気を醸し出すことに成功している。

キュートでその甘いボーカルから「スイート・スー」と呼ばれ、クラシック音楽の豊かな素養を持ち、オペラまで志したものの、たぶん単純に彼女はハープが大好きで、ハープを伴ってオペラ歌手にはなれず、さりとて歌一本でもしっくりいかなかったのだろう。ハープ弾き語りという分野は稀で、彼女は勇気をもってその分野を切り拓いたといえる。しかし残念ながら、このアルバム1枚でシーンから消えた。一方で、このアルバムからは、ハープが大人気だった1950年代の古き良きアメリカの空気と佇まいが漂ってくる。そして、いつかまた第二、第三の「スイート・スー」が現れないかと心待ちにしている。

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