※この記事はハープライフWEBから転載しています。
中村:ハープの効果的な練習方法についてお聞きしたいの。サーシャは毎日、どんな練習していますか?
サーシャ:効果的な練習ねえ(笑)。日によって違うんだよ。時間がたっぷりあるときは、直近の目的(コンサートやレコーディングなど)にあった曲を弾くけどね。僕がそういう質問をされた時に、いつも逆に尋ねることは、「ひょっとして、いきなりスケール練習から始めている?」っていうこと。始めから練習で旋律を弾くということは、あまり意味がないし、お奨めしないよ。ポジションを決めたら、左右の指を別々に1本ずつ単音でつま弾いてゆく。最後に親指。ドレミファでもいいから、1音ずつ指の腹で意識的に強く弾いてゆくこと。ただし、指を鉤(かぎ)みたいに曲げて弾く人もいるけど、そういう人はこの練習の時点で、指が痺れてしまう(笑)。その後に曲を弾くならば、たぶんその先が続かないよね。トレーニングと割り切ると、ウォームアップにはこれが一番だと思うけど。
中村:それを繰り返し、やってゆくのね。曲を通しで練習したりしないの?
サーシャ:もちろん、ウォームアップしてからね。曲の練習がベストだから。でもさ、どんなに速いパッセージを弾くにしても、難しいパートを弾くにしても、どの曲も分解してみたら1音ずつの集合体でしょ。要は、コンサートや発表会のときだけ上手く、速く弾ければいいじゃない(笑)。その1音が出せないのに旋律を奏でるって、それは無理だよね。ウォームアップではゆっくりと、遅いペースでまずは弾いてみる。するとどうしても指使いが上手くいかず、つまずくポイントが出てくる。今度は、そこを集中的に弾いてみて指使いを克服する。その繰り返しかな。しっくり来たら、その段階で曲の練習に入る・・・
中村:確かに、私たちみな誰もがやってきていることなのよね。
サーシャ:できないところは、実際にノートに書き出して、そこを集中的に訓練するといいよ。1音ずつの調整って、音を知ることと支配することにつながるからね。チューニングする際にも、耳と体に馴染んだ音はすぐに調整できるようになる。僕なんか、人生の3分の1はたぶん弦のチューニングしているような気がするよ(笑)。
【サーシャ・ボルダチョフ~中村愛 スペシャル・トーク】
テーマ3:毎日どういった練習をしているの?