※この記事はハープライフWEBから転載しています。
中村:いかにサーシャでも、練習に息詰まるとか、練習したくないときってあると思うの。そんな時には、どうしている?
サーシャ:ダンスかな。冗談だよ(笑)。うーん、これは特異な環境でもあったけど、僕は練習が小さい頃から生活の一部になってしまって、練習しないって日がなかったんだよ。5才から15才までは練習漬け。疑問も特に抱かなかった。母が先生代わりになって毎日みてくれた。スイスへ留学する前まで、カトリーヌ・ミッシェルとか、3人くらいの先生に習っていたけど、カトリーヌなんて「夜想曲」を9時間できるまでやらせる・・・とかね。そんなの平気だった。その後スイスに来て、独りになって初めて「練習の意味」について考えた。ハープ以外に指揮、作曲、音楽理論の勉強もあったし、誰も僕に何をしろとは言ってこなかったからね。だから、練習したくなかったら自然と何もしなくなった(笑)。たぶん、愛さんが言いたいのは気分転換ってことだと思うけど、いっそハープを忘れて他の音楽を聴いてみることもやったら、「この曲をハープで弾いたらどうなるんだろう」って、またハープを弾いていた(笑)。そこで気付いたんだ。誰も僕に「ハープを弾け」って強制しているわけではない。自分が好きだからハープを弾いている。しかも、もっと学んで上手くなりたいと思っている。だったら、練習をやらないという選択のほうが難しいなと。
中村:あー、こんな質問しなければよかった(笑)。めげるー。では、最後の質問ね。あなたにとって、ハープとは?
サーシャ:「自分を表現する楽器」かな。歌う、踊る、演じる、ドラムを叩く・・・表現も人それぞれだと思うけど、幸いなことにハープはとてもユニークな楽器だと思う。たった一台でオーケストラのように奏でることもでき、弾く人によって色々な表情を見せてくれる楽器だし。もちろん、できること、できないこと含めて、ハープの世界は奥が深い。世間であまり人気のある楽器とはいえないかも知れないけれど、ハープに出会えたことを感謝している。この楽器の可能性をもっと広げてみることに、努力してゆくつもりだよ。
中村:本音で答えてくれて、どうもありがとう。
(2017年9月 銀座十字屋にて)
【サーシャ・ボルダチョフ~中村愛 スペシャル・トーク】
テーマ5:もし練習したくないとき、何をする?