CDレビュー:Green Chorus /間を奏でる
前作「doux」のレビューでは、彼らの音楽を“音楽家のトライブが祝祭的な空間で繰り広げる密室パラダイス”のような調子で書いたのだけれども、最新作「Green Chorus」では“コンテンポラリーな味わいを身にまとったノマドな音楽師たちの語らい“といった、さらに広がりある変貌を遂げていたことを報告しておきたい。
冒頭の「Cobalt Calm」を聴いていたら、あのチーフタンズとパット・メセニー&ライル・メイズを足して二で割った様な、空間をすり抜けてゆくような爽快で、海風のように優しくが心地よいサウンドが飛び込んできた。アルバムのタイトル曲の「Green Chorus」でもそのテンションは受け継がれ、それはまるで短編映画のような音像を残しながら、軽やかに前へ進んでゆく。ここへきて、すっかり独自の様式美を確立したかのような成熟が垣間見えた。全てがその形式とは言わないが、アイリッシュハープの堀米綾が、これから始まる物語の端緒を拓く重要な役割を果たし、ヴァイオリンが曲想を増幅させたところで、パーカッションが起伏を担うスパイスを撒き、ピアノ+フレットレスベースがモーダルな響きを与え、かつてデイヴ・グル―シンが作った一連の映画音楽のように、絵が無くても情景が見えてくるような展開を演出してクロージングへと誘う。静謐(せいひつ)であり、濃密であり、いつまでも彼らの音楽の行間に留まっていたい欲求が起こる。ハープが様々な演奏体系や音楽ジャンルへダイブしている現況の中では、最もすんなりはまった形態ともいえ、今後のさらなるグループの動向に否が応でも期待がかかる。この秋から冬にかけて、最高のおススメ・サウンドである。
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